料理の現場 「出汁」を終えて 料理の現場 「出汁」を終えて

室町和久傳

料理の現場
「出汁」を終えて

2019.07.11

山々の緑が深くなる頃。
京都では梅雨は何処へといった日が続く中、料理の現場「出汁」の日を迎えました。
 
テーマは「出汁」。
料理に欠かすことのできない出汁に向き合う中で、料理人がまず注目したのは水でした。

この日は、京都の南は酒どころとして有名な伏見。街中では御所東にある京都三名水の一つ、梨木 神社の染井の水。北は禅僧として著名な一休宗純ゆかりの大徳寺真珠庵から、当日汲んできた水をお客様に飲み比べて頂くところから始まります。 実際に水を飲むと、それぞれに味わいが全く違う事に驚きます。
京都では、水の硬い柔らかいによって引き出されるものが違うため、食文化や生活文化、歴史を改めて感じる事が出来ます。

出汁の原点は縄文時代まで遡り、その頃の食物を煮るところから始まりました。昆布は、室町時代から蝦夷地より北前船で日本海を渡り、精進料理が発達していた京の都へと運ばれ重宝されました。

昆布の話に耳を傾けた後は、用意された三種類の鰹節を削り、削りたてを味わいます。鰹節のいい香りが部屋中に広がります。昆布も鰹節も生産地の環境や加工過程の中で生まれる違いを理解しながら、料理は作り出されていくのです。
そして、三カ所の水違いでとられた出汁を味わうと、研ぎ澄まされた口の中にそれぞれの違った出汁の風味が広がります。

料理人による魚の捌き方を見た後は、お客様ご自身で包丁をにぎり、魚を捌きます。
夏には鱧を、冬には甘鯛をと、料理の現場では季節によって違う魚に触れ楽しむ事が出来ます。

出汁は昆布と鰹だけにとどまらず、食材の熟成や発酵によって生み出される旨味を引き出した、数々の出汁も並びます。
 
食事が終わると、松本料理長より「本日、最初に皆様と昆布と鰹を一緒に勉強させて頂き、召し上がって頂いたお献立は鰹以外の食材からとったお出汁でつくりました」と一言。
皆驚きに包まれるなか、会の初めに昆布と鰹の繊細な出汁を味わって頂き、料理人にとっても出汁に向き合ったからこそ生まれた料理を、召し上がって頂きたかった思いが語られました。

料理の最後には、ラーメンを。
鶏ガラ、あご出汁、焼いた海老に数種類の野菜をじっくり煮込んだスープが、食事の最後を締めくくりました。